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作曲年:1962年
作曲:Herbie Hancock(ハービー・ハンコック)
この曲はピアニストのハービー・ハンコック(当時21歳)が1962年にブルーノート・レコードからリリースしたデビューアルバム『Takin’ Off』に初収録された。
タイトルを直訳すると「スイカ男」になるが、これはハービーが幼い頃に聞いたシカゴのスイカ売りの口上をイメージして作曲されている。日本では石焼き芋やわらび餅の移動販売をイメージすると分かりやすいだろうか。今もわずかながらボルチモアにArabberと呼ばれる馬車で果物や野菜を売る行商人が残っているので、参考までに紹介しておく。
さて、この曲は当初ハード・バップのスタイルで録音されたが、その後は様々なスタイルで演奏され、ジャズのみならず多様なジャンルのミュージシャンによってカヴァーされた事で有名となった。
特にキューバ出身のパーカッショニスト、Mongo Santamaría(モンゴ・サンタマリア)のバージョンは大ヒットとなり、1963年のビルボードのヒットチャートで最高10位に達した。ピアニストのChick Corea(チック・コリア)がモンゴ・サンタマリアのバンドを脱退した後、ハービーが代役を務めた際にこの曲を演奏したことがきっかけになったという。またこのバージョンはアフロ・キューバン・ジャズとR&Bを融合したBoogaloo(ブーガルー)というジャンルの元になったとも言われている。
またJon Hendricks(ジョン・ヘンドリックス)が歌詞をつけて歌っているバージョンなどもあり、こちらは子供がスイカ売りの行商人に向かって「待って~」と追いかける内容になっている。
この曲は標準的な12小節のジャズ・ブルースを4小節引き伸ばした16小節の構成となっており、耳馴染みの良いメロディとフレーズの最後のブレイク(演奏を止めて無音を作ること)がフックになり、非常に分かりやすい構成となっている。それによりジャズ・ミュージシャン以外にも非常に受けが良く、Buddy Guy(バディ・ガイ)、Albert King(アルバート・キング)、Little Walter(リトル・ウォルター)といったブルース・ミュージシャンや、James Brown(ジェームス・ブラウン)のバンド(The J.B.’s)や、Julie London(ジュリー・ロンドン)なども取り上げるほどであった。
ハービー自身も1973年のアルバム『Head Hunters(ヘッド・ハンターズ)』においてファンク・ビートで再録音している。こちらはパーカッショニストのBill Summers(ビル・サマーズ)がアフリカのピグミー族の音楽に見られる声と笛の音をイメージしてビール瓶を吹いて演奏している。こちらは非常に大胆なアレンジとなっており、テンポも大きく落としているため、初めて聞く人はほぼ別の曲に聴こえるだろう。セッションの際にこのバージョンで演奏する時は事前の確認が必須である。
前述の通り楽曲自体の難易度は低いのでセッション初心者のみならず、楽器演奏の初心者にとっても取り組みやすく、ビギナー向けのセッションではよく演奏されている。
イントロはF7の4小節単位の進行で、ベースのフレーズからスタートしてから他のパートが追随するパターンと、カウントインで全員同時に入るパターンが多い。カウントインでそのままテーマに入る場合ももちろんある。
テーマは非常に短いので最初と最後に2コーラスずつ演奏する事がほとんど。いわゆる2 in 2 out(2イン2アウト)。
エンディングはブレイクの後のフレーズをrit.(リタルダンドの略、リットとも言われる。意味はだんだん遅く)して最後のF7で着地するのが普通。
参考動画は色々と紹介しておくが、最後のMiles Davis(マイルス・デイヴィス)のものが普段のセッションの場で演奏されている内容に最も近いだろう。
参考音源
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可能な限り正確な情報を公開できるように勤めていますが、誤りや参考動画のリンク切れなどがありましたら指摘いただけると幸いです。